施工条件に応じた技術の使い分けで、現場の効率と品質を両立
福美建設株式会社
長野県駒ケ根市
建設事業本部 建設事業部
片桐 貴司 氏
会社概要
福美建設株式会社の本社は、長野県駒ヶ根市に位置している。駒ヶ根市は、東に南アルプス、西に中央アルプスを望み、天竜川が市内を縦断する、豊かな自然に囲まれた地域である。昭和41年の創業以来、地域に根ざした事業を展開してきた同社は、来年に創業60周年を迎える。
現在、長野県内では土木工事を中心に、愛知県・静岡県・松本地域を含む中部地方ではインフラ保全事業を展開。さらに、太陽光発電施設の建設については全国を対象に営業活動を行っており、事業の広がりとともに、地域密着型企業から広域的な建設会社へと進化を遂げている。
Solution Linkage MG
施工条件に応じた3Dマシンガイダンスの活用で、現場の施工精度と効率を改善
福美建設株式会社は、長野県で施工された「令和6年度 天竜川ダム統括管内維持工事」において、ICT施工の一環として3DマシンガイダンスSolution Linkage MG(以下、SL-MG)仕様のZX200-7を導入した。本工事は、天竜川水系に位置するダムの遠隔管理室建設予定地の造成を目的としており、施工の効率化と安全性の向上が求められていた。
約4,000㎥の掘削および約4,400㎥の盛土材敷均し作業を効率的かつ高精度に実施する必要があった。従来の施工方法では、作業時間や人員の確保に課題があり、生産性の向上が求められていた。これらの課題を解決するため、ICT建機や3次元設計データを活用した施工技術を導入し、作業の効率化・精度向上を図ることで、全体の生産性向上をめざした。
人員・予算制約下でも導入可能な、後付け可能な3Dマシンガイダンスの選択
限られた人員での施工体制の中、生産性向上をめざしてICT施工の導入を検討していた。しかし、受注金額が大きくない現場では、導入コストを抑えつつ、正確な施工を実現する必要があった。そこで、標準機への後付けが可能で、専用ICT建機に比べて導入コストを抑えられる3DマシンガイダンスのSL-MGを日立建機日本の営業から提案され採用することとした。
直感的操作と高精度施工を実現するSL-MGの導入効果
SL-MGを活用することで、施工現場における操作性と作業効率の向上を図った。モニタの起動時間が早く、画面切替操作もスムーズであるため、作業開始時の立ち上がりが迅速に行えた。また、タッチパネルによる直感的な操作性により、現場作業員が機器を容易に扱うことができ、操作ミスの低減にもつながった。さらに、オフセット機能を活用することで、盛土材の敷き均し作業における施工精度が向上し、作業時間の短縮と生産性の向上を実現した。
3Dマシンガイダンスの活用で広がるICT施工の可能性
従来は、マシンコントロール機能を搭載したICT建機を用いて施工を行っていたが、今回は初めて3DマシンガイダンスシステムのSL-MGを導入した。施工対象の土砂には粒径のばらつきがあり、転石を含む箇所も存在した。そのため、マシンコントロールによる自動制御による施工では対応が難しく、細かな調整が必要な場面では制御のオン・オフ操作が頻繁に発生していた。これにより施工効率が低下する課題があった。
SL-MGは自動制御を行わず、オペレータの判断で柔軟に施工できるため、こうした不均質な土質条件下でもスムーズな作業が可能となった。「今後は、現場の土質や施工条件に応じて、マシンコントロール搭載のICT建機と3DマシンガイダンスのSL-MGを作業面とコスト面で使い分けることで、より高い施工効率と生産性の向上をめざしていきたい」と片桐氏は話す。
オペレータからも、操作感の良さが高く評価されている。複雑な設定や操作を必要とせず、直感的に扱えるため、初めての使用でも戸惑いが少ない。従来のICT建機とは異なり、汎用機と同じ感覚で操作できるため、普段通りの機械として違和感なく使える点が大きなメリットとなっている。
対象工事に縛られない、現場目線で進めるICT施工の取り組み
片桐氏は、これまで複数のICT施工を経験する中で、省人化や残業時間の削減といった効果を実感している。一方で、ICT対象工事でない場合は、導入費用が発注者から支給されず、機器のレンタル費用などが高額になることもある。そうした状況でも、人件費の削減効果を踏まえ、ICT施工は対象工事に限らず積極的に導入すべきものと考えている。
創業者の志を継ぎ、未来を見据えた企業変革
「次の50年も社会に必要とされる企業であり続けたい」という思いを込めて、平成25年に創業者・久保田福美の名を継承し、社名を「丸福久保田組」から「福美建設」へと改称した。現在は、土木工事、インフラ保全、太陽光発電所建設の3つの事業を柱に、地域密着型のゼネコンに加え、広域的に展開するサブコンへの力もいれている。これからも、不屈の精神を持って、持続可能な社会の未来づくりに貢献していく。