施工フェーズに合わせて最適なICT建機を活用、MC/MG併用で施工効率向上
久保興業株式会社
愛媛県喜多郡内子町
土木建設部 部長
東灘 将吾 氏
土木建設部
本田 昭二 氏
会社概要
愛媛県喜多郡内子町五十崎(いかざき)に本社を構える久保興業株式会社は、1967年の創業以来、「地域の環境づくりに奉仕する企業」を理念に掲げ、砕石・生コン・土木建設業に加えて、シイタケ菌床栽培にも取り組み、地域密着型の経営を展開してきた。 土木建設事業では、五十崎地域で唯一、愛媛県土木S級の認定を受けており、道路改良や河川工事を中心に、地域インフラの整備に貢献している。また、シイタケ菌床栽培では、再生資源利用率100%をめざし、環境にやさしい栽培に取り組んでいる。
久保興業が位置する内子町は、2020年に地元企業でICT施工を完結する「内子モデル」を構築・実践するなど、愛媛県内でもICT施工の先進地域として知られている。同社では、2021年に0.25㎥クラスのマシンガイダンスを導入し、小規模現場で初のICT施工を実施。翌年には河川現場2件と道路改良工事1件をICT施工で完工するなど、積極的な取り組みを続けている。
Solution Linkage Assist
マシンコントロールの活用で環境への配慮と作業の効率化を両立
久保興業が施工する「小田加補改(樹)第5号の1 (一)肱川水系 小田川総合流域防災工事」は、施工延長約400 m、掘削土量約26,000㎥に及ぶ河道掘削工事である。小田川は、平成30年7月豪雨で甚大な被害を受けた肱川水系に位置し、愛媛県では「大洲土木事務所圏域治水対策連携強化プロジェクト」を立ち上げ、同規模の洪水にも耐えうる流域治水の強化を進めている。
本工事の施工区域は、アユ漁が行われる漁業区域に隣接しており、水質保全への配慮が不可欠である。そのため、掘削は水面上までに留める必要があり、環境への影響を最小限に抑える厳密な高さ管理が求められる現場となった。
このような条件下で、久保興業では3Dマシンガイダンス Solution Linkage MG(以下、SL-MG)仕様のZX200-7と 3Dマシンコントロール Solution Linkage Assist(以下、SL-Assist)仕様のZX200X-6のICT油圧ショベル2機種を導入した。従来手法では、20 m間隔で丁張を設置し、丁張間はオペレータの感覚で施工していた。掘削が100 m進むごとに残土搬出を止めて、2~3日かけて測量を実施。過掘りや余掘りが見つかった場合は、該当箇所に戻って再施工する必要があった。ICT油圧ショベルの導入で、3D設計データをもとに丁張不要で高精度な施工が可能となり、過堀りや余掘りによる手戻りを大幅に削減できた。
SL-Assist仕様のZX200X-6は、バケットを施工目標面で制御する掘り過ぎ防止機能を搭載。特に精度が求められる仕上げ作業においても、オペレータが過掘りのストレスを感じることなく施工できる点が高く評価されている。「仕上げ作業では、もう手放せない存在です」と語るのは、同社でICT油圧ショベル導入当初からオペレータを担当し、本現場の現場代理人を務める本田氏。
ICT油圧ショベルの活用により、環境に配慮した施工を効率的に進めている。
Solution Linkage MG
標準機と同じ操作性で、粗掘削の施工効率を向上
本工事では、2024年発売されたSL-MG仕様のZX200-7を同社で初めて導入。この製品は、3Dマシンガイダンス機能に重点を置いて開発したことで、爪先精度などのICT油圧ショベルに求められる品質を維持しながら、マシンコントロールショベル機よりも導入コストを抑えている。
「導入コストを抑えたICT油圧ショベルの登場は、ICT施工に取り組みやすくなるので施工業者としても歓迎しています。」と東灘部長は話す。
出水期前の掘削作業では、設計面+50㎝までの掘削をZX200-7 SL-MG仕様で実施。ガイダンスに使用する目標面の設定には、タブレット上で設計データの高さを変更できる「オフセット機能」を活用した。
オペレータの本田氏は、「モニタ視認性や操作がシンプルで、非常にわかりやすく扱いやすい」と話す。また、本製品は標準機にICT機器を後付けする方式を採用しており、標準機と操作性が変わらず、違和感なく操作できる点も高く評価いただいた。「標準機と同じ操作感なので、掘削作業のスピードはSL-Assistを使うよりも早い。特に、今回のような設計面から50㎝程度までの粗掘削はSL-MGを利用した方が効率が上がる」と本田氏は話す。
SL-MGならではの長所を生かした活用で、施工効率の向上に取り組んでいる。
ICT推進室の設立と未来への展望
久保興業は、2023年に愛媛県・大洲市・内子町・建設業協会向けに3Dマシンガイダンスの現場見学会を開催するなど、地域のICT施工の普及を牽引している。
「現在、ICT推進室を立ち上げ、3D設計データの作成を自社で対応可能な体制を構築しています。将来的には、3次元測量も自社で対応し、ICT施工全体を内製できる体制をめざしています」と東灘部長は話す。
地域に根ざした総合建設会社として、ICT施工に積極的に取り組んできた久保興業。技術と人材の両面で地域を支える企業として、今後も「内子モデル」のさらなる進化と、地域建設業界の未来を見据えた挑戦を続けていく。